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臼杵陽「見えざるユダヤ人」2007/04/06 23:18:15


臼杵陽「見えざるユダヤ人―イスラエルの〈東洋〉」 平凡社 (1998年)

の感想です。

ミズラヒームとは、非ヨーロッパ系出身、特に中東イスラーム世界出身のユダヤ人を指します。日本人にとって、ユダヤ人は、西欧におけるユダヤ人のイメージとしてしか知られていませんが、イスラエルにおいて、中東イスラーム世界からの移住者は、人口上文化上、さらに政治上も大きな位置を占めています。

彼らは、アラビア語を母語としヨーロッパ音楽よりアラブ音楽にシンパシーを感ずる人々であり、歴史的にはヨーロッパに置けるような組織的な弾圧を受けたことはありませんでした。しかしイスラエル建国により、中東諸国において反ユダヤ感情が高まり、イスラエルへの移住を余儀なくされてしまったのです。

彼らは、ヨーロッパ系ユダヤ人(シオニスト)により形成されたイスラエルにおいては、西欧系>東欧系>中東系>イスラエル国籍のアラブ人>パレスチナ人という序列に組み込まれ、「見えざるユダヤ人」となっています。

こうした実情から、彼らは、アラビア語文学などにより独自の文化、アイデンティティを形成しており、イスラエル・アラブの和解の可能性を象徴するような存在です。しかし、アラブとの和平を進めたラビン首相の暗殺犯はイエメン系であり、問題の複雑性を認識させられます。

日本人の知らない、イスラエルの実情を知る貴重な一冊です。

立山良司「揺れるユダヤ人国家-ポスト・シオニズム」文春新書(2000年) との併読をお薦めします。

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