村野藤吾「京橋三丁目ビル」 ― 2008/03/01 04:31:12
京橋三丁目ビル
設計:村野藤吾
1978年
中央区京橋3-1-3
(2008年3月1日撮影)
その名の通り京橋3丁目の交差点にあるビル。
角に当たる部分が切り取られた様なデザインになっているのが最大の特徴です。彫刻刀で溝を彫った様な感じで、溝の下部はタイルが張ってあります。
また、地下への階段や、入口のひさしには、アールヌーボー調とでも言うんでしょうか、植物様のデザインになっています。
ちょうど築30年になりますが、現役のオフィスビルとしてがんばっています。京橋近辺も再開発が目立つようになって来ましたが、特徴あるビルとしてこのまま使われ続けて欲しいですね。
【参考サイト】株式会社第一ビルディング「京橋三丁目ビル」
前川國男「日本相互銀行本店」(その6) ― 2008/03/02 04:30:50
前川國男「蛇の目ミシンビル」 ― 2008/03/08 11:36:14
旧蛇の目ミシンビル(東京大栄ビル)
設計:前川國男
1965年
中央区京橋3-1-1
2008年2月23日/3月1日
京橋三丁目ビル(設計:村野藤吾)と片倉ビルを挟んで並んでいます。
1964年第17回の建築学会作品賞受賞作です。
十字型のユニット構造が特徴的で面白いですね。1階はアーチに支えられたピロティになっています。チョッと狭い感じがするのですが、もしかしたら一部を店舗に使ってしてしまっているのでしょうか。
十字型のユニットはビル背面も同様で、こちらの方が引き締まった感じがして、より美しく感じられます。
元々は蛇の目ミシンの本社ビルだったのだと思うのですが、現在のビル所有者は、アセット・マネジャーズ系のSPCのようです。時代の象徴ですね。ファンドに運用資産として組み込まれて、メンテナンスに力が入れられると良いのですが。
村野藤吾「八重洲ダイビル」 ― 2008/03/15 11:57:00
八重洲ダイビル
設計:村野藤吾
1968年
東京都中央区京橋1-1-1
2008年2月23日/3月1日撮影
東京駅のまん前、八重洲通りにあるオフィスビルです。
窓枠と柱のリズムがとても面白いですね。側面(写真右上)も正面と同じデザインです。
京橋三丁目ビルには、曲線的で植物的な印象がありましたが、こちらはよりシャープで機械的な印象です。村野らしい多様な「建築語彙」とでも言うのでしょうか。近くで、村野作品が見比べられるのも楽しいですね。
【参考サイト】
ダイビル株式会社「八重洲ダイビル」
柳宗玄「サンティヤーゴの巡礼路 (柳宗玄著作選6)」 ― 2008/03/22 05:25:00
柳宗玄「サンティヤーゴの巡礼路 (柳宗玄著作選6)」八坂書房(2005年)
ちょっと値の張る本なので購入に躊躇していたら、本書と著作選5 が、某大手ネット古書店で各3,150円で、売られているのを発見。2冊とも購入してしまいました。
著者は、柳宗玄(やなぎ むねもと、1917- )。美術史家であり、柳宗悦の次男です。
本書主要部の「サンティヤーゴの巡礼路」は、
『サンティヤゴの巡礼路』世界の聖域16、講談社、1980年の再録です。著者は、その後も、幾度かサンティヤーゴ巡礼路を訪れているとのことで、写真は全て著者自ら撮影したものに差し替えられています。
著者の視点は現代よりも、12世紀当事の巡礼の姿を捉えることにあるます。現代の打ち捨てられた旧巡礼路や廃墟となった建物をたどりながら、サンティヤーゴ巡礼最盛期の巡礼たちの姿をそこに見ています。
当時の資料や教会の装飾像等を基に、人々が大きな苦難を耐えながら巡礼する姿を描き出しています。多数の写真や図版も、読者が、著者とともに12世紀のサンティヤーゴの巡礼路に思いを馳せることを助けてくれます。
本書の後半には、有名なカリクストゥス写本(Codex Calixtinus)(12世紀)の中から『サンティヤーゴ巡礼案内書』の全訳が付されており、これもまた読者に12世紀の巡礼者の姿を彷彿とさせてくれるものです。
読者を12世紀と現代の往還の旅に誘う本書は、定価で買う価値が十分ありました。
【関連文献】歴史学研究会(編集)「巡礼と民衆信仰」青木書店(1999年)
前川國男「日本相互銀行本店」(その7) ― 2008/03/23 04:01:45
柳宗玄「ロマネスク彫刻の形態学(柳宗玄著作選5)」 ― 2008/03/29 01:47:37
柳宗玄「ロマネスク彫刻の形態学(柳宗玄著作選5)」八坂書房(2006年)
先週に引き続き、某大手ネット古書店で購入した本について。
本書の初出は全て「みずゑ」(美術出版社)に1964年中11回に亘り連載されたもので、単行本化されるのは本書が初めてとのことです。
40年以上経っているとは言え、時には奇妙とも思えるロマネスク彫刻の背後にある、精神や技術等を解き明かす視点は、新鮮な印象をもたらします。
聖母やキリストの彫刻に関する議論も面白いのですが、本書の面白さの中心は、怪獣や鳥獣、植物など、ロマネスクの聖堂の彫刻としては、形態として奇妙なものたちに対する議論にあると言えるでしょう。
中世・ロマネスク時代の人々の世界観やキリスト教以前の宗教の影響、彫刻の彫られる場所の建築上の意味など様々な背景が解き明かされていくのは非常に面白く、楽しめます。
また、元々雑誌の連載と言うこともあって、各テーマの文章の長さも適当で読み易くなっています。
多くの写真が掲載されているのも、本書の特徴ですが、全て著者自ら撮影したものだそうです。「あとがき」には、自ら撮影した写真のみを用いる意図が説明され、納得させられました。
価格は高いですが、「待望久しい往年の好評連載」の謳い文句通りで、十分に元は取れると思います。
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