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広野彩子「自民党が少子化を加速させた―自民党・野田聖子衆院議員インタビュー」日経ビジネスオンライン(2010年2月15日(月))2010/05/07 07:04:00


広野彩子(日経ビジネス記者)「自民党が少子化を加速させた―自民党・野田聖子衆院議員インタビュー」日経ビジネスオンライン(2010年2月15日(月))

今頃になって発見したのですが、日経ビジネスオンライン(2010年2月15日(月))の記事から。自民党の野田聖子衆院議員へのインタビューです。少子化問題をストレートに語ります。

野田 聖子(のだ・せいこ)氏

1960年生まれ。83年、上智大学外国語学部比較文化学科を卒業、帝国ホテルに入社。87年、岐阜県議会議員選挙に当選。国政へは、1度の落選を経て93年、衆院議員総選挙に初当選。98年、第1次小渕政権で郵政大臣。2008年、内閣府特命担当・消費者行政推進担当・宇宙開発担当大臣。6期目。少子化に関する著書に『だれが未来を奪うのか 少子化と闘う』(講談社)がある。

ほとんど政治的主張は異なるですが、少子化の問題については非常に共感します。多くの人に読んでほしい。

経済との関連性などが分析できていなかった上、少子化でもしばらく経済成長率が下がらず、ずっと右肩上がりで来た。それを経験してきた自民党は「少子化が経済を傷めている」という認識を持たずにきた。だから、単なる女のわがままだと考えたのです。

「単なる女のわがまま」と考えていたていた時点で、自民党は何も理解できていなかった。すでに危機的な状況にあったにも関わらず、「保守文化心情」=「封建的女性観」に囚われていた。

―― 「少子化は女性のせい」という意識は、日本の今の意思決定層の年代に蔓延していませんか。

政治だけでなく、経済界すべての業界に及んでいます。でも長寿国家ですから、その人たちがいなくなるのを待っていられません。待っていたら、子どもがますますいなくなる。だから、今どうにか頑張らなくてはいけない。

まずは民主党に、夫婦別姓が実現出来るかどうかです。子ども手当は今いる子にあげるお金ですが、少子化は子どもを増やす必要がある。子ども手当では子どもは増えないでしょう。高学歴・高所得の女性から生まれにくいのが日本の特徴で、そこが一番の問題点なのに改善されない。

「少子化は女性のせい」という考えに凝り固まって有効な対策が打てない既存権力。夫婦別姓はこの「封建的女性観」を破壊する強力なツールなはずであった。

フランスで生まれている子どもの4割が法律上、シングルマザーです。日本は1~2%。この差が大きいことが分かっていない。

少子化対策は、「ありとあらゆること」をしなければだめだと思っています。夫婦別姓はその「あ」程度です。自民党政権では、それすらだめでしたから。

―― 夫婦別姓は、少子化対策でそんなに大きいファクターなのですか?

結婚の多様化を進める要素です。ようは、この国は結婚しないと子どもを産まない国で、子どもを生む大前提は結婚です。

しかし結婚は同姓でなければいけないというルールから外れた人もいるわけで、そういう色々な結婚の形を認めることは、恒常的に子どもの数を増やす可能性がある政策なのです。

結婚しなくても子どもを産んでも大丈夫なら、インセンティブになると思います。結婚しない限り子どもを産まないのなら、結婚の多様化を考える。フランスもそれで子どもが増えた。日本では今でも、シングルマザーだと少し白い目で見られる。それがフランスにはなく、むしろ主流です。

夫婦別姓、結婚形態の多様化、婚外子の権利保護、たしかに自民党では(民主党でも)反対するジジ、ババが多そうだ。

もちろんこれは相当極端な話で、現実には難しいです。私が言いたいのは、それぐらい「えぐい」テーマにしないとだめだと言う事です。今は、まだ議論がきれいごとで終わっています。

でも即効性を求めるなら、20万人のうちもし半分が中絶できなければ、10万人が生まれてきますよね? そういう極端な議論もひっくるめた、本気の、包括的な議論が必要だと言いたいのです。

でもそういう真正面の議論は出来ない。自民党はずるくて、「中絶は女性の権利だ」と言って逃げていた。でも本来、女性の権利はちゃんと避妊できることで、中絶できることではない。問題をすり替えている。

中絶を厳格化するのと引き換えにピルの自由化をしたら、適正に子どもが生まれてくるでしょう。でもなぜかしていない。ピルが認可されるまでに数十年かかりました。バイアグラは1年ぐらいで認可されたのに(笑)。

ピルの承認と中絶の厳格化、今まで曖昧にしていたものを明らかにして、子供の出産を促す方法です。

―― 義務と同時に意欲を引き出すことも大事だと思います。フランスでは出産して育児をし、かつ仕事をしているいいモデルが、政治にも企業にもいる。

橋本聖子議員に「産むなら辞めろ」と抗議した国民

私、もうすぐ50歳になります。私の前の世代は、「女として何もかも犠牲にして頑張りました」という人が尊敬され、土井たか子さんとか、市川房江さんのように生涯独身で政治に身を捧げた人がロールモデルでした。「それはないだろう」と思う。変えたいけれど、実は、この国の人って厳しいのです。

10年ほど前、橋本聖子参院議員が妊娠した時、「仕事を辞めろ」という抗議文がたくさん届いた。全国民、男女問わず。それもあって、彼女は産後5日で復帰した。国民には女が男並みに仕事するなら子どもを産むなという価値観が強かった。

―― 支援する声はなかったのですか。

その時はなかったようです。でも、2009年に現職閣僚でありながら2人目を妊娠した小渕優子衆院議員の時は、支援と抗議、半々ぐらいだったそうです。情報を伝えるマスコミも意思決定が男性主導ですし。政治もマスコミも一見平等に見えて、実は全然違うでしょう?。

自民党の橋本聖子国会議員の妊娠の際には、仕事をやめろとの抗議文が、男女を問わず届いた。年齢、男女を問わず固定した、性役割に固執する人達が、少子化に拍車をかけているという自覚を全く持っていない。まあ、小渕優子衆院議員になって若干改善したようですが。どうもこの辺の「国民感情」は「雅子妃バッシング」と繋がるものがあると思う。

試行錯誤で何でもやらないとダメな段階にきている

今の60代、70代のおじさんたちが「えええーっ」と仰天するようなことをしないと、少子化は止まりません。少子化を加速させてきたのはこの人たちです。増やすなら逆を行く。

今の若い世代は、共働きでなければ生活していけません。民主党がそれに向けて抜本的に対策できるかというと、自民党ののれん分けみたいな人がたくさんいるから、そこまではできないでしょう。でも何でもあり、少子化対策にタブーなし、というのがどの党でも大前提だと思います。

この政策に限っては、如何なる手段を用いてもジジ、ババの意見を無視して、実現すべきである。

歴史的に人口が減って栄えた国はないと言われます。ローマ帝国も人口が減って滅びました。正直言うと、こんな議論を今さらしているようでは、手遅れです。この10年が勝負だったと思います。内心忸怩たる思いがあります。

残り時間は短い。移民政策とも絡めた抜本的早急な対応が必要であることは間違いない。