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柳宗玄「サンティヤーゴの巡礼路 (柳宗玄著作選6)」2008/03/22 05:25:00


柳宗玄「サンティヤーゴの巡礼路 (柳宗玄著作選6)」八坂書房(2005年)

ちょっと値の張る本なので購入に躊躇していたら、本書と著作選5 が、某大手ネット古書店で各3,150円で、売られているのを発見。2冊とも購入してしまいました。

著者は、柳宗玄(やなぎ むねもと、1917- )。美術史家であり、柳宗悦の次男です。

本書主要部の「サンティヤーゴの巡礼路」は、

『サンティヤゴの巡礼路』世界の聖域16、講談社、1980年

の再録です。著者は、その後も、幾度かサンティヤーゴ巡礼路を訪れているとのことで、写真は全て著者自ら撮影したものに差し替えられています。

著者の視点は現代よりも、12世紀当事の巡礼の姿を捉えることにあるます。現代の打ち捨てられた旧巡礼路や廃墟となった建物をたどりながら、サンティヤーゴ巡礼最盛期の巡礼たちの姿をそこに見ています。

当時の資料や教会の装飾像等を基に、人々が大きな苦難を耐えながら巡礼する姿を描き出しています。多数の写真や図版も、読者が、著者とともに12世紀のサンティヤーゴの巡礼路に思いを馳せることを助けてくれます。

本書の後半には、有名なカリクストゥス写本(Codex Calixtinus)(12世紀)の中から『サンティヤーゴ巡礼案内書』の全訳が付されており、これもまた読者に12世紀の巡礼者の姿を彷彿とさせてくれるものです。

読者を12世紀と現代の往還の旅に誘う本書は、定価で買う価値が十分ありました。

【関連文献】
歴史学研究会(編集)「巡礼と民衆信仰」青木書店(1999年)

コメント

_ alice-room ― 2008/04/20 19:00:20

初めまして。TB有り難うございました。
まさに良書だと私は思います。こういうのもが日本語で読めるのが実に嬉しい限りです(笑顔)。
柳氏の著作は、全部欲しいぐらいですが、値段と本の厚さで場所をとってしまうのでごく一部しか買えないのが、悩みの種です。
今後もこのシリーズ出てくる予定みたいですし、楽しみですね♪

_ northeast ― 2008/04/22 01:53:02

alice-roomさん、コメントありがとうございます。

 だいぶ前に、岩波文庫の「ヨーロッパのキリスト教美術」(エミール・マール著、柳宗玄他訳)とか、岩波新書の「秘境のキリスト教美術」(柳宗玄著)を読んで大変面白かったのですが、柳宗玄については特に意識していませんでした。

 その後、たまたま古書店の店頭で「サンティヤーゴの巡礼路」を見て表紙の写真に惹かれるものがあったのですが、値段が高かったのでそのときは購入せず、一週間後にやっぱり買おうと思って古書店に言ったら既になくなっていました。

 それ以来、新刊で買おうか否か迷い続けていたのですが、ネット古書店で発見したときは、まさに「小躍りした」って状態でした。

 第3回配本「西洋の誕生」からは、さらに価格が1050円あがっていますね。出版社が儲からないと出版が続かないでしょうから、今度は新刊で購入しようと思ってます。

 ところで、以前「エチオピア王国誌」を古書店で購入したときに、ネット検索していたら、alice-roomさんのブログに到達、こんな本に興味を持つ人が他にもいるんだなぁと感心していた私でした。

 今後も宜しくお願いします。

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_ 叡智の禁書図書館<情報と書評> - 2008/04/20 18:53:26

いつも愛読している柳宗玄氏の手になる著作集の一つ、サンチャゴ・デ・コンポステーラへの巡礼路に関する本です。 中世において、大変有名な巡礼案内書を全訳していると共に、著者自身が何度も実際に道を辿った経験を踏まえつつ、その内容について解説を加えています。 ..