Google
 

柳宗玄「ロマネスク彫刻の形態学(柳宗玄著作選5)」2008/03/29 01:47:37


柳宗玄「ロマネスク彫刻の形態学(柳宗玄著作選5)」八坂書房(2006年)

先週に引き続き、某大手ネット古書店で購入した本について。

本書の初出は全て「みずゑ」(美術出版社)に1964年中11回に亘り連載されたもので、単行本化されるのは本書が初めてとのことです。

40年以上経っているとは言え、時には奇妙とも思えるロマネスク彫刻の背後にある、精神や技術等を解き明かす視点は、新鮮な印象をもたらします。

聖母やキリストの彫刻に関する議論も面白いのですが、本書の面白さの中心は、怪獣や鳥獣、植物など、ロマネスクの聖堂の彫刻としては、形態として奇妙なものたちに対する議論にあると言えるでしょう。

中世・ロマネスク時代の人々の世界観やキリスト教以前の宗教の影響、彫刻の彫られる場所の建築上の意味など様々な背景が解き明かされていくのは非常に面白く、楽しめます。

また、元々雑誌の連載と言うこともあって、各テーマの文章の長さも適当で読み易くなっています。

多くの写真が掲載されているのも、本書の特徴ですが、全て著者自ら撮影したものだそうです。「あとがき」には、自ら撮影した写真のみを用いる意図が説明され、納得させられました。

価格は高いですが、「待望久しい往年の好評連載」の謳い文句通りで、十分に元は取れると思います。


コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://northeast.asablo.jp/blog/2008/03/29/2887558/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。

_ 叡智の禁書図書館<情報と書評> - 2008/04/20 18:51:36

序文より本書の扱う内容について。タイトルは様式を超えた総合的な形態を扱う意図による。美術作品に認められるそれ固有の表現方法を様式と名付けて様式の研究を美術史の中心問題とすること ・・・ 中世芸術について言えば、とくに重要な要因は時代の宗教感情である。 ・・..