フィリップ・ナイトリー「戦争報道の内幕―隠された真実」 ― 2009/12/29 06:01:57
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フィリップ・ナイトリー「戦争報道の内幕―隠された真実」,中公文庫(2004年)
フィリップ・ナイトリー「戦争報道の内幕―隠された真実」,中公文庫(2004年)
クリミア戦争から、ベトナム戦争までの、戦争報道の実態を暴いたノンフィクション。第一次世界大戦、第二次世界大戦により報道統制の技術はピークを迎えた。ベトナム戦争以後、西側先進国では直接的な検閲は減っているが、記者自身の中立性の維持―特に、前線で明らかに攻撃対象となりえるジャーナリストにとって、そして常時自軍と行動を共にことによる意識の変化、愛国意識の高揚、そして自己検閲という状況に変わりはない。つねに、軍隊は作戦の最良の部分の報道にたいしてのみ便宜を与える。
米軍発表のTVゲームの様なピンポイント爆撃映像は、戦争の実態の何も伝えていない。湾岸戦争では、西側メディアの拠点としてたホテルは米軍戦車の砲撃を受け、ジャーナリストに死傷者をだした。アルジャジーラTVは度々米軍の攻撃をうけた。
どのような戦争においても、必ず「両軍」ともに残虐行為をおこなう。敵の残虐行為を伝えて、正戦論・好戦論を高揚させるか、味方の残虐行為を伝えて、無意味な、犯罪的な戦争を知らしめるか。ジャーナリズムは如何様にも戦争をコントロールできる。
困難であるが故に、戦争が有るところジャーナリストがいなければならない。イラクで殺害された橋田信介さん、小川功太郎さん、ミヤンマーの反政府デモ取材中に射殺された長井健司さん。少なくとも彼等の報道したもの、しようとしていたものについてもっと知らなければならない。
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