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芦田均「バルカン」2007/03/29 02:33:18


これまた、古書店で入手した、

芦田均「バルカン」岩波新書(1939年) (ただし、1992年の復刊版)

の感想です。現在出版社品切れ。

1939年(昭和14年)刊のバルカン諸国事情です。著者は元外交官で、当時衆院議員であった芦田均(後(1947年)の首相)です。

トルコ、ルーマニア、ギリシャ、ブルガリア、ユーゴスラビア、アルバニアの6カ国の自然、民族、政治、経済等を解説しています。

バルカン各国の外交・内政が、ファシズムの台頭するドイツ、イタリアを含めたヨーロッパ列強の政策に翻弄されていたこと、各国とも民主主義・議会政治が未成熟で不安定な独裁的政治体制が敷かれていたこと等、当時の情勢がよく理解できます。

また、1990年代の東欧の混乱時に、アルバニアからの難民がイタリアに押し寄せているというニュースを聞いて、「何故イタリアに?」と思ったものですが、当時イタリアがアルバニアに植民地的権益の拡大を図っていて、歴史的に関係の深いことも知りました。

さらに、結局ユーゴスラビアを分解させてしまう民族対立が、その建国時からの問題であったこと等、現在も尾を引くバルカンの民族問題が当時から既に大きな課題であったことが分かります。

本書は、芦田が任地の事情を深く理解した有能な外交官であったことを窺わせるものであり、また、現在のバルカン事情を理解するにも大いに役に立つ、非常に興味深い著作です。