Google
 

山内昌之編著「中央アジアと湾岸諸国」2008/01/26 21:57:59


山内博之編著「中央アジアと湾岸諸国」朝日選書(1995年)

10年以上前の出版ですが、様々の著者が「中央アジアと湾岸諸国」(主にロシアと国境を接するイスラーム諸国)に付いて記していて興味深いものがあります。

特に、ロシアの現役外交官の寄稿は、ソ連/ロシアの外交・思考がうかがえて興味深いものがあります。

中央アジアに対する帝政ロシア/ソ連/現ロシアのある意味一貫した思考と政策は、ロシアと中央アジアの関係の問題の解決の困難さを感じさせます。

また、トルコ、イラン、イラク、パキスタンといった国々が、中央アジアのイスラーム圏諸国との間に大きな利害(特に核兵器開発)を持って、外交活動をおこなっていることは注目すべきことだと思います。

最後に、戦前の日本の新疆(東トルキスタン)への関心を論じた第七章は、興味深いものがあります。満州、蒙古への権益を維持するため、ソ連の新疆への進出を警戒して、日本が様々な情報収集をおこなっていたことはあまり知られていないことだと思います。戦前の回教圏研究も同様の動機からおこなわれていた訳で、日本と中央アジアの最初の接点が、日本の帝国主義の中にあったことが理解されます。

チョッと旧い著作ですが、中央アジアと湾岸諸国の様々な側面を知り、この地域での紛争の背後にある各国の利害を知るのには格好の著書ではないでしょうか。