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ファーティマ・メルニーシー(私市正年、ラトクリフ川政祥子訳)「イスラームと民主主義-近代性への怖れ」2008/02/23 10:40:54


ファーティマ・メルニーシー(私市正年、ラトクリフ川政祥子訳)「イスラームと民主主義-近代性への怖れ」平凡社(2000年)

著者ファーティマ・メルニーシーは、モロッコ出身の女性社会学者。イスラームと民主主義の関係にストレートに切り込んいます。

本書全体として「恐れと境界」という言葉をキーワードに、現代イスラーム社会が民主主義や自由・平等といった概念に対して抱いている拒絶の背景をあらわにしていきます。

著者の主張は、本来のイスラームは、西欧的な意味での民主主義や自由・平等といった概念を共有しており、現在見られる、反西欧主義、反民主主義といった思潮は、各時代の権力者が自らの権力を維持するために作りだしてきたものに過ぎないというものです。さらに、現在のイスラーム復古主義や原理主義もまた、彼らの主張、権力奪取に都合の悪い民主主義などに反対しているに過ぎません。著者の主張は、多くの資料の分析に裏付けられており、非常に説得力があるものです。

一方で、その結果として、西欧での側のイスラーム脅威論や文明の衝突といった主張も根拠の無いものであることが分かります。

イスラーム諸国の現状、特にアフガニスタン、イラク、スーダンなどの現状には暗澹たるものがありますが、著者の主張はこれら諸国の市民に希望の光を与えるものです。

こうした著者の主張の中には「政教分離」も含んでいるため、多くのイスラーム主義者からは強い反論を受けています。また、西欧民主主義の無謬性・正当性を安易に受け入れており、無批判にすぎるという反論もあるでしょう。

しかし、これら批判はあるにせよ、著者の主張には、今後のイスラーム社会や市民の歩むべき道を示すものを含んでいることは間違いないと思います。

  

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