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宇野昌樹「イスラーム・ドルーズ派」2008/01/19 17:04:48


宇野昌樹「イスラーム・ドルーズ派」第三書館(1996年)

某大手ネット古書店で1,050円で入手。日本語では、現在唯一のドルーズ派に関する単行本です(本書後記にも書かれていますが、戦前に一冊だけ出版されているそうです!!)。

ドルーズ派は歴史的にはシーア・イスマイール派から分派した宗派だそうですが、もはや「クルアーン(コーラン)」を聖典とせず独自の経典を有し、ムハマドも神の使徒とは認めないため、殆ど独立した宗教ともみなせます。

その独自の経典は、宗派外部のものが読むことがでないのは勿論、一般信徒でさえ読むことが禁ぜられ、高位の宗教階層だけが所有し読むことが許されています。そのため教義には不明なことが多く、本書でも詳細は分からないとしています。

何とも謎の宗派であり、歴史的には一定の勢力を持っていた時期もあったようですが、少数派、また正統イスラームから見れば異端とも言える教義のため、長く苦難の道を歩んできました。ベルの「シリア縦断紀行」でも、ムスリムとは対立するグループとして、あるいはドルーズ派であることを隠して暮らしている人々のことが触れられています。

特に近代になってからは、イスラエルの建国に関連して、ヨーロッパ諸国やシオニストとの間に、一定の関係を結ばざるを得ない立場にあり、反イスラエルの正統イスラームからは親イスラエルと見られ、その苦難も増しているようです。

ドルーズ派を語るには、パレスチナ等中東の歴史、地理を語ることにもなるため、大した予備知識の無い私とって、本書は決して読み易いものではありませんでしたが、中東関連の文献に名前だけは良く登場する「ドルーズ派」の真の姿を知るために、貴重な一冊でした。

【関連サイト】
「鍼灸あましのたまご」さんのブログ「シリアの旅 シャハバ1: 鍼灸あましの孵卵器」にドルーズ派(ドゥルーズ派)の人の暮らす村の様子が掲載されています。

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