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岡田恵美子「イラン人の心」2007/04/28 10:33:42


またまた、ネット古書店で入手した

岡田恵美子「イラン人の心」NHKブックス[393]新装版、日本放送出版協会(1993年)

の感想です。現在出版社品切れ。

著者は、ペルシャ文学者で、本書は、1963年から1967年までの4年間の若き日のイラン留学記です。

当初はイラン人気質に戸惑い反発しながら、イラン人の心を理解していく過程が、様々なエピソードを交えながら綴られています。また、研究の意義への疑問や将来に対する不安など、海外留学生なら誰でも陥る心理状態から、自信を取り戻していく過程も、本書のもう一つの重要なテーマとなっています。

学生寮の下働きのオバサン、オジサン達や、町の商店主といった庶民達との出会い、交流から、自己中心的で、お節介で、おしゃべり好きで…とった様々なイラン人気質に、辟易させられ、反発しながらも、徐々に親しみを覚え、理解を進めていく著者の心の動きに従って、私もイラン人気質を少しは理解できたような気がします。

さらに、教授達との交流からは、イラン人の誇りである歴史や文学に対する自負心の中から、庶民達にも通じる(チョッと自己中心的で陶酔的なところもある)「イラン人の心」への理解を深めていきます。

また、欧米やアジアからの留学生達との交流は、著者の精神的よりどころでもあり、各国気質の違いを更に認識することともなります。

そうした中、著者の親友となるのは、アメリカ人留学生で、2人は強固な「日米同盟」を形成しますが、アメリカは、やはり日本人にとって比較的理解し易い国なのでしょうか。もっとも、この親友は、(両親の大反対を押し切って)アラブ人青年と結婚してしまい、著者を驚かせ、また焦燥感を感じさせることにもなりますが(いかにもアメリカ人的な行動!?)。

現在から40年以上も前(東京オリンピックの前年!!)、現在とは全く異なり、日本にいてはイランに関する情報など殆ど知ることの出来ない時代に、単身イラン留学を実行した著者は、おそらく現在の我々が感じるよりもずっと強烈に、イランの文化、社会、そして「こころ」に出会い、それだけ深い理解を得たのではないでしょうか。

帰国後の著者は、ペルシャ文学の研究者として活躍し、多くの著書・翻訳書を著しています(東洋文庫は品切れが多いですが)。「ホスローとシーリーン」や「ライラとマジュヌーン」は本書中にも何度も登場します。

【主な著書・翻訳書】

岡田恵美子「隣りのイラン人」平凡社(1998年)
岡田恵美子「ペルシアの神話 光と闇のたたかい 世界の神話 (5)」筑摩書房(1982年)
フェルドウスィー(著)、岡田恵美子(訳)「王書―古代ペルシャの神話・伝説 」岩波文庫(1999年)
フェルドウスィー他(著)、岡田恵美子(訳)「ペルシアの四つの物語」平凡社(2004年)
ハーンサーリー、ヘダーヤト(著)、岡田恵美子他(訳)「 ペルシア民俗誌」東洋文庫、平凡社(1999年)
グルガーニー (著)、岡田恵美子(訳)「ヴィースとラーミーン-ペルシアの恋の物語」平凡社(1990年)
ニザーミー(著)、岡田恵美子(訳)「ライラとマジュヌーン」東洋文庫、平凡社(1981年)
ニザーミー(著)、岡田恵美子(訳)「ホスローとシーリーン」東洋文庫、平凡社 (1977年)

【復刊ドットコム復刊リクエストページ】

岡田恵美子「イラン人の心」NHKブックス

イランつながりということで…。なんとも日本は情けない国だと思わされました。

【イラン人家族の強制退去】

出入国管理行政と砂上の楼閣的な規範: カタハタの学舎
偽善と英断の境界: 凡爺いやはやBLOG
群馬県高崎市内のイラン人アミネ・カリルさん(43)夫妻: hotoke blog

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