池上直己、J.C.キャンベル「日本の医療―統制とバランス感覚」 ― 2010/03/13 01:53:57
池上直己、J.C.キャンベル「日本の医療―統制とバランス感覚 」中公新書(1996年)
日本の医療に問題は多いのですが、知識不足や誤解による意味のない批判があふれているように思います。そもそも日本の医療制度はどうなっていてどんなパフォーマンスをあげているのかを知るのが問題解決の前提なはずです。本書は1996年の出版で少々古いのですが、日本の医療制度を正しく理解しどんなパフォーマンスをあげていたのか知るのに最適です。
本書を読めばわかるように国民皆保険制度の導入とその後の政策運用は、政策決定者の意図した以上にうまくいっていました(ほとんど偶然の産物といってもいいぐらいで、意思決定の「ゴミ箱モデル」というのを思い出します)。先進国中もっとも安い医療費で国民の良好な健康を確保してきました。もちろん、本書の書かれた後には、社会保障費の削減が進み、医療現場の負担は危機的状況にまで至っています。介護保険は創設されたものの、十分な介護がいきわたっているとは言えません。
国民皆保険制度の維持は絶対必要ですが、医療の質を確保するためには相応の費用を必要とします。国民全体として、医療費を増やすという以外の選択肢はありません。財源を保険料としても直接税としても消費税としてもマクロでみれば同じことで、家計部門と企業部門の負担の比率が変わるだけです。
本質的に必要なことは、国民全体として十分な医療費を支出する合意、家計部門と企業部門の負担の比率の合意、家計間での収入による負担の配分の合意です。保険制度はこの合意が容易にできるよう分かりやすく設計される必要があります。
新しい情報はこちら。
海外制度はこっちの方が詳しい。2002年旧版(改訂・第二版)。
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