海老沢有道校註「どちりなきりしたん 長崎版」 ― 2010/04/09 07:00:00
海老沢有道校註「どちりなきりしたん 長崎版」岩波文庫(1950年、1991年改版)
本書の底本は、1600年(慶長5年)6月上旬長崎耶蘇会の後藤登明宗印刊行の国字本で、ローマのカサナテ文庫に所蔵される世界唯一の刊本です。
安土・桃山期の外国人宣教師が来日して布教活動を行うに際して、広く信徒に読ましめたものです。「どちりなきりしたん」とは“キリスト教の教義”の意で、現在の公教要理また教理問答ともよばれるものです。
「イデヤ(Idea;理念、キリシタン書では「相」と訳せられる)」、「ホルマ(Forma;形相、形態)」、「マテリヤ(Materia;物質)」などといった哲学概念(アリストテレス?)が語られており、武家階級、知識階級を対象として編纂されたものと考えられます。
問答形式で、それほど難しい日本語が使われているわけではないですし、ひらがなが多く難読な場合漢字を()内に付しています。そうは言っても、安土・桃山期の古文ですから、私の様に、古典が最も苦手な科目だった人間にはかなり苦しい。全体が短い(全部で118ページ)ので根性で読み進めていきます。
ちょっと引用、
弟子「ビルゼン サンタ マリヤに申しあげ奉るさだまりたるオラシヨありや。」
師匠「アベ マリアといふオラシヨなり。ただいまをしふべし。
ガラサみちみち玉ふマリヤに御れいをなし奉る。御あるじは御みとともにまします。によにん(女人)のなかをひてわきて御くはほう(果報)いみじきなり。又御たいないの御みにてましますゼズスはたつとくまします。デウスの御ははサンタ マリヤいまもわれらがさいごにも、われらあくにんのためにたのみたまへ。アメン。」
なんとか分かるけど大変です。
こちらにも「どちりなきりしたん」が掲載されていますが、たしかローマ字版からの翻字だったと思います。
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