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加藤雅彦「ドナウ河紀行」2007/04/15 23:00:00


加藤雅彦「ドナウ河紀行―東欧・中欧の歴史と文化」岩波新書 (1991年)

の感想です。

著者によれば、「中欧」とは単なる地理的概念(=中央ヨーロッパ)ではなく、「ドナウ河にのぞむ国々、…“ドナウネットワーク”によって結ばれたきた国々」(p.76)であって、ミルン・クンデラを引用して「『中欧』の“境界を正確に引こうとすること無意味であろう。中欧は国家ではない。それは文化であり、運命である”」(p.74)と言っています。

ドナウ源流のドイツから、オーストリア、チェコスロバキア、ハンガリー、ユーゴスラビア、ブルガリア、ルーマニア、ソ連と黒海に至るまでが紹介されていきます。

ハプスブルグ帝国領としての結びつき、オスマン・トルコの支配と独立の歴史、両大戦による変動等により、「中欧」が発展し、また阻害されいった歴史が理解されるとともに、バルカン諸国の民族問題の根本も明らかにされていきます。

こうした「中欧=ドナウ世界」の案内である本書は、1991年刊であるため、ソ連邦は未だ健在、ユーゴスラビアの内戦は勃発したばかり、チェコとスロバキアは分裂前と、時事性に欠けることは否めません。

しかし、それを割り引いても、ミッテルオイローパ(「中欧」=ドナウ世界)へのやさしい案内として、十分に新鮮で興味深い好著と言えるでしょう。

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