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茅原健「工手学校―旧幕臣たちの技術者教育」2009/11/08 05:00:00


茅原健「工手学校―旧幕臣たちの技術者教育」中公新書ラクレ(2007年)

工手学校とは、1887年(明治20年)に設立された技術者養成学校で、現在の工学院大学の前身です。東京職工学校(東京工業大学)が1881年(明治14年)、東京物理学講習所(東京理科大)も1881年(明治14年)の設立ですから日本の技術者教育の嚆矢の一翼を担っていた学校です。

本書自体は、至って校史的な内容ですが、興味深かったのは、国木田独歩の小説(「非凡なる凡人」、「運命」に所収)の主人公が工手学校の出身とされていることです。夏目漱石の「坊っちゃん」の主人公が物理学校(東京理科大)の出身と設定されているのは有名ですが、工手学校もとりあげられていたんですね。「坊っちゃん」が「親譲りの無鉄砲」な人物なのに対して、「非凡なる凡人」の方は「西国立志編」を座右の書とする刻苦勉励の人物と対照的です。それと、主人公は神田の夜学で数学を学んだとあるのですが、これはもしかしたら研数学館(の前身)のことかもしれません。

現在「非凡なる凡人」は、新刊書籍では入手できないようですが、青空文庫で読むことができます。短い作品なのでPC画面で読んでもそれほど苦にはなりません。

青空文庫は国木田独歩「非凡なる凡人」

書籍なら品切れですが、国木田独歩「運命」岩波文庫